⑨「私は“前に出る人”ではなかった」

これまで、講師として人前に立つ機会も多くありました。

伝えることは好きですし、
登壇すること自体が苦手というわけでもありません。

なにせ、テレビに毎日出演する仕事を、13年間続けてきたのですから。

けれど、どこかでずっと、
しっくりこない感覚がありました。

自分が話すよりも、
「この人がどう話せば、もっと伝わるだろう」と考えている時間のほうが、
圧倒的に長いのです。

目の前の人が、どんな思いを持っているのか。
どこに本音があるのか。
どうすれば、その人の言葉として伝わるのか。

気づけば、いつもそこに意識が向いていました。

そして、その部分に関わっているときのほうが、
自分の力が自然と発揮されている、という感覚がありました。

登壇して評価されることよりも、
登壇する人が評価されるほうが、
ずっと嬉しい。

この仕事を続ける中で、
その感覚は、はっきりと確信に変わっていきました。

私は、前に出て語る人ではなく、
語る人を支える側の人間なのだと思います。

その人が、本来持っている言葉を引き出し、
伝わる形に整え、
きちんと届くようにする。

その役割を、引き受ける。

それが、自分の仕事です。